トレンチコートは、その歴史の中で培われてきた機能性とデザイン性を兼ね備えた、ファッション界の不朽の名品です。軍用コートとしての起源から現代のファッションアイテムへと進化を遂げたトレンチコートは、独特のディテールやシルエットが特徴的で、着こなし方次第で様々な表情を見せてくれます。
本記事では、トレンチコートの魅力に迫るべく、その歴史やルーツ、特徴的なディテールやシルエット、そして今っぽい着こなし方のコツなどを詳しく解説していきます。
トレンチコートの歴史とルーツ
トレンチコートの歴史は、軍用コートとしての起源から始まり、今ではファッションアイテムとして親しまれています。以下で具体的にその歴史を解説します。
軍用コートとしての起源
トレンチコートは、第一次世界大戦中に英国陸軍が塹壕での過酷な環境に耐えうるコートとして開発したのが始まりです。防水性や耐久性に優れたギャバジン生地を使用し、身体を保護するための様々な機能的ディテールが施されました。
ファッションアイテムへの進化
戦後、トレンチコートはミリタリーウェアからファッションアイテムへと進化を遂げます。映画スターやセレブリティがトレンチコートを愛用したことで、その人気は一気に高まりました。機能性を維持しつつ、よりスタイリッシュなデザインが追求されるようになりました。
トレンチコートの特徴的なディテール
トレンチコートには、その歴史的背景から生まれた特徴的なディテールが数多く存在します。
ラグランスリーブ
トレンチコートの多くはラグランスリーブを採用しています。これは、肩周りに余裕があり、コートの下に厚手の衣服を着込んでも窮屈さを感じさせないのが特徴です。クリミア戦争で活躍したラグラン将軍が右手を負傷した際、簡易な着脱を目的に採用した仕様が起源とされています。
エポレット
エポレットは、肩の部分に備えられたベルト状のディテールです。もともとは階級を示すバッジを付けていましたが、後に銃や双眼鏡、水筒のストラップが滑り落ちるのを防ぐために使われるようになりました。また、倒れた兵士を救出する際、引きずるための持ち手としても活用されていたそうです。
ガンフラップ
女性用コートに見られる右前合わせなら左側、男性用コートに見られる左前合わせなら右のみに施されているのがガンフラップです。かつてはライフルで発砲した際の肩への衝撃を和らげる役割を担っていました。襟のボタンを全て留めた状態の時には、雨だれの進入も防いでくれます。
ストームシールド(アンブレラヨーク)
肩から背中にかけて二重構造になったフラップのような部分は、ストームシールドと呼ばれています。嵐の際に水が衣服の中へ侵入しにくいように考案されたディテールで、やや傾斜するように縫製されることで、水がすべり落ちていくようになっています。
インバーテッドプリーツ
バックスタイルの裾に施されたひだ山を突き合わせたような構造のプリーツが、インバーテッドプリーツです。ウエストまで届くほどの広い範囲に切れ込みが入っており、内側のボタンを外すと大きく広がります。戦地で乗馬する際に、開いた足の動きを阻害しないよう考案されたといわれている機能的なデザインです。
スロートラッチ
スロートラッチは、本格仕様のクラシックなトレンチコートに見られる襟裏に収納されている小さなベルトのことです。雨風が侵入するのを防ぐため、フック留めした襟元を上からカバーするための役割を果たします。チン・ウォーマーと呼ばれることもあります。
貫通式ポケット
トレンチコートの起源であるタイロッケンコートはポケットがなく、内側に手を入れられるスリットだけが施されていました。
その名残を本格仕様のトレンチコートは再現しており、箱ポケットから内側に手を入れられる貫通式ポケットが施されています。これによって、ベルトや前立てを締めて着用した状態でも、テーラードジャケットやパンツのポケットに収納した小物の取り出しが可能になります。
また貫通ポケットの先には、新聞や雑誌を収納しておける大容量のポケットが施されている場合もあり、電車やバスでの移動時に読む本の持ち運びにも便利です。
アームベルト
寒風や雨風の進入を締めて防げるように、袖口にはベルトが施されています。この袖口にベルトが施されている仕様も、トレンチコートならではの機能的デザインのひとつと言えるでしょう。
トレンチコートのシルエットと着こなし方
トレンチコートは、そのシルエットや着こなし方によって印象を大きく変えることができます。
クラシックなダブルブレステッドスタイル
定番のダブルブレステッドスタイルは、ウエストベルトでシェイプすることでスマートな印象に仕上がります。襟を立てて着こなせば、よりシャープで精悍な雰囲気を演出できます。
ベルトでウエストマークを調整する
トレンチコートのウエストベルトは、シルエットを調整するための重要なディテールです。ベルトを締めることでウエストラインを強調し、スタイリッシュな着こなしが可能になります。一方で、ベルトを緩めてラフに着こなすことで、リラックス感のあるカジュアルなスタイルを楽しむこともできます。
襟の立て方や前合わせによる印象の変化
トレンチコートの襟は、立てて着こなすことでよりエレガントでフォーマルな印象を与えます。一方、襟を倒してラフに着こなせば、カジュアルでリラックスした雰囲気になります。前合わせの留め方によっても、着こなしの印象は変化します。上部のボタンだけを留めるダブルブレストのスタイルは、クラシックで洗練された印象を与えます。
ドレスアップとカジュアルダウンの使い分け
トレンチコートは、ドレスアップしたスタイルにもカジュアルダウンしたスタイルにも合わせることができる万能アイテムです。スーツやドレスシャツと合わせればビジネスシーンで活躍し、ジーンズやカットソーと合わせればオフのリラックススタイルを楽しめます。TPOや好みに合わせて、使い分けることが大切です。
トレンチコートを今っぽく着こなすコツ
トレンチコートを現代らしく着こなすには、いくつかのコツがあります。
インナー選びで雰囲気を変える
トレンチコートのインナー次第で、着こなしの雰囲気はがらりと変わります。シャツやニットを合わせればきれいめな印象に、パーカーやスウェットを合わせればスポーティな印象になります。インナーを変えるだけで、トレンチコートの表情も変化します。
旬のカラーやディテールにこだわる
定番のベージュやネイビーのトレンチコートも素敵ですが、旬のカラーを取り入れるのも今っぽい着こなしのポイントです。カーキやオリーブ、パステルカラーなど、時代に合ったカラーを選ぶことで、トレンチコートをより今っぽく見せることができます。また、袖口やベルトなどのディテールにもこだわってみましょう。
レイヤードスタイルで季節の変化に対応
トレンチコートは、レイヤードスタイルとの相性も抜群です。秋口はジャケットやカーディガンと合わせ、真冬はボアブルゾンをインナーに取り入れるなど、季節に合わせたレイヤードを楽しむことができます。レイヤードを上手に取り入れることで、トレンチコートを長いシーズン活用できます。
小物使いでアクセントをプラス
マフラーやストールなどの小物を取り入れることで、トレンチコートのシンプルなスタイルにアクセントを加えることができます。カラーやパターンにこだわった小物を選び、コーディネートのポイントにするのも素敵です。また、バッグや靴選びもトレンチコートの雰囲気に合わせて工夫してみましょう。
まとめ
トレンチコートは、長年愛され続けている定番アイテムです。その歴史から生まれた機能性と、洗練されたデザイン性を兼ね備えたトレンチコートは、まさにファッションの頂点に君臨する存在と言えるでしょう。
本記事で紹介した特徴やディテール、着こなし方のコツを参考に、あなたらしいトレンチコートスタイルを探求してみてください。トレンチコートと共に、ファッションを楽しむ喜びを感じられることでしょう。
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